ハリウッドのクラシック・フィルム・ノワールを追うシリーズ「FILM NOIR REVIEW」ですが、第2巻の準備ができました。通販を開始いたします。
今回は、1946年から47年のあいだに公開された10本のフィルム・ノワールを取り上げます。
前回の第1巻では、第二次世界大戦前から戦争終結までの時期の作品を取り上げました。そこでは、のちにフィルム・ノワールと呼ばれることになる映画が生まれてきた背景を探りながら、新しい映画の潮流を支える技法(ボイスオーバー、フラッシュバック、ローキー照明等)がどのように確立されていったかを見ました。第2巻は、戦争直後の作品群を取りあげます。戦争の終結と同時にハリウッドは空前絶後のピークを迎えます。1946年、観客動員は市場最高を記録し、アメリカ国民の3人に1人は週に1回は映画館に映画を観に行くと答えています。戦時中にビジネスモデルの再考を迫られたハリウッドの映画会社は、新しく確立したスキームのもとで史上最高の興行収入を上げていきます。独立プロデューサーたちが登場し、《タフ》な映画が作られ始めます。そして、戦争によって変わらざるを得なくなったアメリカ社会の様々な側面が、映画のテーマにも組み込まれていきます。
第2巻の目次です。
0 |
1946 |
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1 |
The Spiral Staircase, 1946 |
監督:ロバート・シオドマク |
2 |
Gilda, 1946 |
監督:チャールズ・ヴィダー |
3 |
Deadline at Dawn, 1946 |
監督:ハロルド・クラーマン |
4 |
The Blue Dahlia, 1946 |
監督:ジョージ・マーシャル |
5 |
Somewhere in the Night, 1946 |
監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ |
6 |
Black Angel, 1946 |
監督:ロイ・ウィリアム・ニール |
7 |
The Killers, 1946 |
監督:ロバート・シオドマク |
8 |
Brute Force, 1947 |
監督:ジュールズ・ダッシン |
9 |
Crossfire, 1947 |
監督:エドワード・ドミトリク |
10 |
Kiss of Death, 1947 |
監督:ヘンリー・ハサウェイ |
イントロダクションの「1946」では、戦時中から戦後にかけて、アメリカ社会の変化がいかにハリウッドの映画製作に影響を与えたかを見ていきます。戦争による物資の供給制限、特に生フィルムの供給計画がハリウッドに与えた影響やロケーション撮影とテクニカラー映画の人気、灯火管制がもたらした映画製作の問題、メジャースタジオのA級映画へのシフトなど、戦後のハリウッドを支えていくことになるビジネスの基盤の形成過程を分析します。そして、戦後すぐに直面した復員兵の問題と、それをテーマにした作品の受容についても論じます。
10本の映画の分析を通してみていくと、この時期の映画製作者たちが、エンターテインメントを提供しつつも、戦争によってもたらされた《変化》に敏感に反応しようとしているのが垣間見えてきます。それは、『死の接吻』のヒップスターの登場にみられるような《流行の変化》、復員兵の戦争の記憶をあつかう《経験の変化》、そして人種や暴力、権力のあり方を問う《社会を見る眼の変化》といったものとなって映像に記録されています。そして、それは興行体制の変化とも連動して、映画製作の仕組みが徐々に変貌していくことにも連なっていきます。
新刊は、ピコ通販のサイトで入手できます。また、第1巻も引き続き、ピコ通販のサイトで入手可能です。